ハタヨガの目的|アラン・フィンガー(1/7)

講演者: ニューヨーク・イシュタヨガ、Yogiraj Alan Finger氏
主催: アメリカ国立衛生研究所 (NIH)
撮影: iHanuman
翻訳:全米ヨガアライアンス ERYT-500 田中三智子、薬学博士 林 良樹

アメリカ国立衛生研究所 (NIH) はアメリカ合衆国保健福祉省に属しており、医学研究の推進と支援に関する主要な連邦政府機関です。NIHは2008年5月、初めて「ヨガウィーク」を開催し、ヨガの実演、教室、講演などを連日に渡って行いました。このイベントの参加は無料で、一般にも公開されました。

2008年NIHヨガウィークで、オープニングの講演を行ったのは Yogiraj Alan Finger 氏でした。7編のビデオで構成されるこのシリーズで同氏は、彼が開発したイシュタヨガ (ISHTA YOGA) と呼ばれるヨガシステムを説明しています。ISHTAは「 Integrated Sciences of Hatha, Tantra, and Ayurveda (ハタヨガ、タントラ、アーユルベーダを統合した科学)」の頭文字から作られた言葉です。彼の講演から既に年月が流れていますが、このビデオシリーズは高い人気を保ち続けており、時が経っても色褪せない内容を誇っています。そこで私たちは、読者の皆様とこのビデオを共有させて頂こうと思い立ちました。

ヨガと言う言葉は、もともとは“一つにする”“集める”と言う意味だと言われていますが、私は科学的な用語である、ホメオスタシス(恒常性)”の方がより適切な言葉だと思います。

ホメオスタシスとは、我々の存在にバランスを創り出してくれることです。我々は、バランスを創り出すためにまず身体からアプローチします。なぜなら、身体は目でみることができ、変えることができるからです。私たちは、身体にアプローチする方法としてハタヨガをとても正確に行うことを学びました。

“HA”と”TAH”の2つの言葉を説明しておきます。身体の中で力強く、剛くなる場所は、太陽のエネルギーという意味の“HA”と呼ばれ、月のエネルギーで、リラックスと安らぎを表すのが“TAH”と呼ばれます。

私たちのライフスタイルは、生き残るために、攻撃的で挑戦的な生活のストレスにさらされています。これは“HA”の部分です。私たちの身体は、筋肉の力強さかが硬さに変わっていきます。これは通常ストレスがそうさせています。“TAH”は、私たちが夜にやりたいこと、つまり、睡眠などによりストレスを解放しようとすることです。

“HATAH YOGA”とは、強さとリラックス、または安らぎとのバランスをとるためのものです。私たちの実際の身体、筋肉組織は、ヨガのポーズをとる時、簡単なポーズでも様々に働き、皆さんご存知のように素晴らしいバランスをもたらしてくれます。“HA” “TAH”のバランスです。

手を伸ばそうとするとき、ある筋肉は収縮しなくてはなりませんし、ある筋肉は伸ばさなくてはなりません。我々は健康で自由でいるために、束縛し締め付け、解放から阻害している筋肉の緊張をとるため、全てのアサナではあらゆる場所の筋肉を、あらゆる方向へ伸ばしたり締めたりします。

ハタヨガはアサナから始めます。アサナを使って、ストレスを肉体から解放するため、強くしなければならない筋肉を強くし、他の筋肉のストレスを解放するために、必要以上に硬い筋肉を解放します。

生活の中で例をみることができますね。おへそが垂れ下がるほど筋肉が弱くなり落ちてくると、実際立ち上がることもできなくなります。必要な筋肉は強くしておかなければならないし、つけておかなければなりません。これらの筋肉が”HA”です。

“TAH”の筋肉は、あなたがどんな姿勢を取ることができるように、硬くなリ過ぎた全身の筋肉の緊張をとるものです。

生まれたばかりの赤ちゃんを想像してください。赤ちゃんはこんな風に座って、“おー、なんて窮屈だ”なんて言わないでしょ。こんな風に座って、完全に解放されているでしょ。赤ちゃんのようにこんな風に座ってストレッチしようとすると、赤ちゃんはとても簡単に出来ますね。ストレッチしながら遊んだり、身体を起こしたり簡単にできるでしょう。

私たちに何が起ってできなくなったのでしょう?皆さんも赤ちゃんの時があって、簡単にできたはずなのに。何が起こったのかというと、赤ちゃんのように自由に動くための柔軟性が、安定性が失われたのです。これをストレスとよび、人生とも言いますね。

筋肉が硬く柔軟性を阻害している時、私たちをより自由にするため、全てのストレスを解放するために、筋肉を解放してみます。私たちは、全身の骨格の正しいバランスを再び見つけることが必要です。なぜならば、筋肉それ自体もその弱さからストレスを抱えているからです。“HATAH YOGA”の状態ではありませんね。

私たちは、筋肉を適度な力強さを保って、同時にストレッチされたりリラックスすることができなくなると、骨格の構造は徐々に正しいアライメントを失って行きます。内臓もまた、同じように正しい位置を保てなくなります。

全てのヨガのアサナ、ポーズは、全身のそれぞれ異なった筋肉群に作用し、筋肉を協調させて働かせ、正しい全身の骨格と筋肉を創り、どうやってアライメントを正しくするか、骨格と内蔵を健康で正しい位置に保つかを目的にデザインされています。

これができた時に、血液の循環は正しくなり、内臓も正しく動き出します。

もしあなたが、こんな風に前屈みに座っていて、筋肉が貴方を支えることができないと、正しく呼吸はできず、横隔膜も、肺も正しく働けませんし、消化器はおしつぶされ、すべての身体の機能が正しく働きません。

“HA” と“TAH”を、強さと解放を、再びそろえた時、すばらしいバランスをもたらされます。貴方をもっと解放し、もっとクリアに、もっと力強く、もっと健康にしてくれます。全てのポーズはこの目的のためにあるのです。

アサナは私たちを、別の領域のバランスへ導きます。たくさんの全身の筋肉、骨がありますが、これら全てを調和させて働かせること、これがアサナの目的です。もちろんあなた方が今、ヨガを始めたとしたら、正しく行えば、すぐにその効果を感じることができるでしょう。あなたはバランスを取り戻し、ヨガを、統一感を、ホメオスタシスを感じはじめるでしょう。


  • Alan Finger氏とイシュタヨガに関する詳しい情報は、 www.ishtayoga.com をご覧下さい。
  • ヨガ教師の世界的なコミュニティは、 www.ihanuman.com でご覧頂けます。